鹿児島県NPO事業推進連絡会 鹿児島市大会


演題「オープン・ザ・ドア」

          今園貴史 (NPO法人鹿児島ブロンコス理事)

 「オープン・ザ・ドア」とは、ラグビーの盛んなオーストラリアやニュージーランドで、よく聞く言葉で「開放的、何も隠さずに」という意味を持っている。

 両国で、ラグビーに関する様々な施設を回ったが、あちこちでこの言葉を聞いた。この国では自分が見たい、知りたいと思ったところに入っていける。僕は人一倍好奇心が強いので、興味を持ったことは何でも聞いたが、短時間でオープンな関係を作ってくれた人が多かった。

 興味のあるところにはどんどん入っていけるオープンな国、話しかけると気軽に応じてくれるオープンな精神がある。オープンに付き合う気持ちの良さ、心地よさを日本にも伝えたくて「オープン・ザ・ドア」というスタイルを目指している。

 対して日本は、自分を隠してしまうところがある。鎖国の時代が長く続いたので、あからさまに自分を表現することがよく思われていないのではないか。

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 僕は10年前、明治大ラグビー部に所属していた。在学中3度も日本一に輝いた黄金時代だった。部員も120人いて年間試合に出られるのは30人。残り90人は試合にも出られず、何のために練習しているのか分らない状態で練習を続けていた。4年生で卒業が近づくと、こんなつまらないラグビーは絶対やめると考える人が多くなる。僕もそうだった。

 それが、ある友人のひとことで変わった。「お前、他のチームだったら、バリバリのレギュラーで試合に出ていたんだろうな」。何気ない一言だったが、大学に入って初めて自分を評価してもらった言葉だった。もし他の大学でやっていたら、レギュラー選手だったんだろうかと思うと、またラグビーを別の場所でやってみたいと思うようになった。そんな時、ニュージーランドにいる先輩から、自分で好きなチームを選べて、自分のレベルの合わせて試合に出られるという環境があると聞いたので、ニュージーランドに行こうと決意した。

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 ニュージーランドでの体験が、鹿児島ブロンコスでやりたいことの原点になっている。パツマホエというチームに所属していたが、指導者のコーチングの仕方に特長があった。練習の中でも選手個人個人をしっかり評価して、ミスに対してもどうすればうまくいくかのアドバイスをしてくれる。地域に密着したピラミッド型のチームで、最終的にはトップチームの選手に育てたいとコーチは考えるから、長いスパンで指導を考えることができる。

 指導法には「コーチング」と「ティーチング」の2種類がある。ティーチングは大勢の人間をある決まったレールに沿って導くやり方。この利点は短期間でチームを強化できる。日本はティーチング型だ。一方で指導法は選手の幅を固定してしまう欠点がある。

  コーチングの「コーチ」は馬車の意。選手が自分の生きたい道のりを歩みながら目標に向かっていく、そのお手伝いをするのが指導者という考え方である。僕がチームに所属していたころ試合ごとに反省会をして個人個人評価してくれた。日本では個人を重視して反省する事が少なく、悪かったら具体的にどこが悪かったのかをアドバイスもくれない事が多い。この時のコーチは何回もビデオ回し、悪いところをこうすれば良かったんだとポジティブにアドバイスをくれて、次の試合までにここを修復し克服するまでは上のチームでは使わないと明確に指摘してくれた。大学時代に感じた孤独感や自分の存在に対する不安が解消され、コーチングの偉大さを知った。

 チームが地域に深いつながりがあることも特長だ。トップチームは地域のみんなのあこがれだ。トップチームの試合はスタンドが満席になり、みんなで楽しく応援して一体感を作り出している。

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 この両国で体験したことをもとに、僕はブロンコスで、人間としての価値を教えられるコーチングをしていきたい。また正しい指導のできる指導者を育てたい。またスポーツができなくなっても、見る楽しみや運営する楽しみといったことも伝えていけたらと考えている。 (編集:鹿児島新報 政純一郎氏)

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